専門性をどう打ち出す?総合診療と専門診療のバランス戦略
院長先生とお話していると、せっかく認定医や専門資格を持っているのに、それを積極的に訴求していないケースによく出会います。
理由を聞くと、多くの先生がこう答えます。
「専門性を前面に出すと、その分野だけしかできないと思われるのが嫌なんです」
確かに、総合診療が得意でジェネラリストの獣医師にとっては、特定分野だけに絞って見られるのは機会損失にもなり得ます。
ここには専門診療と総合診療、それぞれのメリット・デメリットが関わっています。
専門診療を訴求するメリット
① 単価が上がりやすい
高度医療や特殊検査は単価が高く、利益率も向上します。
② 集患力が強い
「皮膚ならあそこ」「循環器ならあそこ」と口コミが広がります。
③ 競合との差別化になる
同じエリア内でも専門医在籍は強い武器になります。
専門診療を訴求するデメリット
① 患者層が固定化されやすい
特定の疾病や症状ばかり来院し、幅広い症例が減る可能性があります。
② 「それ以外はやってくれない」と思われる
実際は総合診療も可能なのに、専門だけの病院と思われがちです。
③ 紹介元との関係に影響する場合も
一般診療の患者を“取られる”と警戒される可能性があります。
バランス戦略の考え方
総合診療をベースに、専門診療を上乗せ
「一次診療をしっかりこなせるからこそ専門もできる」という形を明確に打ち出します。HPやSNSで“専門ページ”を分ける
トップページは総合診療をメインに据え、専門分野は専用ページで詳しく説明。
→ 一般の飼い主には総合診療の安心感を、特定分野を探している飼い主には専門性を訴求。口コミや実績は自然発生的に活かす
「皮膚ならあそこがいい」「循環器ならあそこがいい」という口コミが自然に広がるなら、それを来院動機の入り口として活用。
専門ページ活用事例
ある病院では、腫瘍認定医の資格を持ちながら、HPのトップでは「地域密着型の総合診療」を全面に。
ただし、下層ページに「腫瘍科」の専門ページを作成し、症例紹介や治療方針を詳しく掲載。
結果、腫瘍目的の新患が毎月数件、同時に一般診療目的の新患も安定して増加しました。
まとめ
専門性の訴求は、単価・集患の両面で大きな武器になる
ただし、総合診療の強みや幅広さが失われるリスクもある
「総合診療+専門ページ」の二層構造で、両方の良さを活かす
自然発生する口コミは無理に制御せず、来院動機として活用