開業後に訪れる「勤務医を雇いたい」という気持ち
開業して数年が経つと、多くの院長先生がこんな気持ちになります。
「自分は外科に集中して、内科や予防は勤務医に任せたい」
「勤務医時代はそんな体制だったから、自分も同じようにしたい」
「同性の獣医師がいれば、精神的にも支え合えると思う」
理想を描き、勤務医の採用を検討する院長は多いのですが、現実は年々厳しくなっています。
雇用コストの高騰とスキルのギャップ
10年前は月給25〜30万円で若手獣医師を雇えた時代がありました。
しかし今は、初任給で35〜50万円が普通になっています。
特に「手術ができる獣医師」は需要が高く、給与とスキルのバランスに悩む院長も増えています。
実際にこんな声もよく聞きます。
「来てくれるだけでありがたいと思ったけど、半年経つと“自分でやったほうが早い”と思ってしまう」
最初の感謝が、次第に不満へと変わっていくのです。
これには、院長の外科実施率と勤務医のスキルの差が大きく関係しています。
院長の孤独感と雇用の壁
もう一つ見落とされがちなのが「院長の孤独感」です。
臨床、経営、採用すべてを一人で抱え込み、
「誰にも相談できない」という院長は多いです。
特に女性スタッフが多い病院では、同性の勤務医に相談したい気持ちもありますが、
雇用という関係は性別を超えて壁となります。
また、臨床技術に妥協したくない院長は、勤務医の手術技術や診療レベルにストレスを感じやすく、
「自分ならもっと速く正確にできるのに」
と思ってしまい、結局は「全部自分でやった方がいい」と感じることもあります。
雇用マネジメントは難しい
こうしたギャップが積み重なると、精神的な負担が大きくなり、
「自分には勤務医を雇うのは向いていなかった」
と諦めてしまうケースも少なくありません。
一方で勤務医側は、
「思ったようにやらせてもらえない」
「院長の方針と合わない」
という状況に陥りやすいですが、
これは人間同士の合う合わないも大きいことを理解しておくべきです。
また、雇用に慣れていない院長のマネジメントを知らずに入職すると、
お互い不幸な関係になりやすいのも事実です。
そもそも「なぜ勤務医を雇いたいのか?」
ここで一度立ち止まり、考えてみてほしいのが、
「なぜ勤務医を雇いたいのか?」
多くの院長が挙げる理由は次の3つです。
勤務医の労働から恩恵を得たい
自分がやりたくない仕事を任せたい
精神的に支え合える仲間が欲しい
このうち後ろ2つの理由が強い院長ほど、マネジメントで苦労しやすい傾向があります。
特に「孤独感の解消」を目的に雇用をすると、逆に孤独が深まることもあるのです。
新しい成功モデルも増えている
最近では、
外科件数を絞りつつ高単価治療で安定経営を実現する院長
紹介症例を中心に運営し、一人で高い外科実施率を維持する院長
など、新しい形の成功モデルも見られます。
雇用ありきで拡大を目指すのではなく、
自分のライフスタイルと経営戦略を一致させることが、これからの獣医療経営には不可欠です。
まとめ:勤務医雇用は本当に必要か?
勤務医の雇用が本当に必要なのか、
あるいは自分らしい経営スタイルが他にあるのか、
将来のビジョンと照らし合わせて慎重に判断してほしいと思います。
もしお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。
一緒に最適な道を考えましょう。