優秀な人材は長く続かない “いるうち”に動物病院を強くするために、今できること
動物病院の経営者のみなさまへ
「せっかく優秀なスタッフが入ってきたのに、1〜2年で辞めてしまった」
そんな経験はありませんか?
私は獣医師として、臨床を含めてこれまで4回の転職を経験してきました。
そのなかで見えてきたのは、「優秀な人ほど短期で辞めていく」という現実です。
今回はこのテーマについて、私自身の体験と、実際に有効だった施策を交えてお伝えします。
「辞められる前提」でどう病院に資産を残すか?を一緒に考えていけたら嬉しいです。
1. なぜ優秀な人材は短期間で辞めるのか?
優秀な人ほど、成長意欲が強く、自分の可能性に気づいた瞬間に“次のステージ”を目指します。
小規模な病院ほどその傾向は強く、少し頑張ればすぐにトップに立ててしまう。
その結果、「このままここにいていいのか?」と悩み、独立や転職を視野に入れやすくなるのです。
2. 「過剰評価」と「依存」は退職を早める
優秀なスタッフが入ると、つい“特別扱い”してしまいがちです。
給与や待遇を特別にする
なんでも任せてしまう
他スタッフと比べて重宝する
一時的には本人のやる気を引き出せるかもしれませんが、「この病院は自分に頼りすぎている」と感じた瞬間に離脱へのカウントダウンが始まります。
3. では、どうすればいいのか?
以下に具体的な3つの施策を紹介します。
(1)競争と役割分担の仕組みづくり
同レベルのスタッフを複数採用する
競争意識が働き、相互刺激で成長スピードが上がります。
とある病院では30代中盤の先生を自由に診療させる代わりに、友達も連れてくるよう依頼。
実際は友達と切磋琢磨し、売上は右肩上がりです。
役割や評価基準を明確にする
「ここで何を求められているか」がわかることで、やりがいも感じやすくなります。
在庫管理や美化医院など、従業員の得意分野に担当制度を設けることで主体性をもった行動が起こります。
(2)“プロセス評価”を徹底する
優秀な人材ほど、「結果を出せば評価される」環境に慣れています。
でも本当に強い組織をつくるには、「どれだけ病院に仕組みを残してくれたか」も同じくらい大切です。
マニュアル作成や教育体制の構築を任せる
成功事例の共有会を定期開催する
後輩育成を評価に組み込む
「成果=数字」だけではなく、「成果=資産化」にしていくことが、病院全体の底上げに繋がります。
(3)キャリアパスと独立支援の提示
いずれ辞めるとわかっているなら、逆に「独立支援」や「経営教育」を提供してしまいましょう。
「ここでの経験が将来に活きる」と伝える
院長業務を少しずつ任せてみる
経営ノウハウを学べる環境を用意する
本気で開業を目指すスタッフは、退職するその日まで「病院をよくしよう」と動いてくれる存在になります。
狭い業界でもある為、良くしてくれた病院の話は周囲関係者へ口コミが広がるはずです。
4. “一緒に働ける時間”を最大限に活かす
優秀なスタッフが来てくれたら、もちろん嬉しい。
でもその時間は、永遠に続きません。
だからこそ、「どう残してもらうか?」に早めに向き合うことが大切です。
後輩育成の仕組みをつくる
院内業務を言語化・マニュアル化してもらう
ノウハウをチームに残す設計をする
こうした工夫をしていくことで、人に依存しない“強い病院”が少しずつ形になっていきます。
まとめ|辞めても残る人材活用こそ本質
優秀な人材は長く続かないと心得ておく
過剰な依存を避け、仕組みに変えていく
成果だけでなく“資産化”を評価する
独立支援や経営学習を通じて、Win-Winな関係に
病院がスタッフに何を与え、どんな風に残してもらうか。
それを考えられる経営者こそ、これからの動物病院経営を支える存在になるのではないでしょうか。