【地方の動物病院の先生へ】「うちは田舎だから高くできない」と言う前に考えてほしいこと
価格を下げる理由が「田舎だから」になっていませんか?
「うちは都心じゃないから、料金は高くできないんだよね」
動物病院の院長先生とお話ししていると、こんな言葉をよく耳にします。
確かに都心と地方では、家賃も所得水準も異なります。
でも、それは「価格を下げるしかない理由」にはならないはずです。
むしろ私が感じるのは、価格ではなく“価値”で選ばれる病院こそが、これからの時代に必要とされる存在だということです。
地域に必要なのは「安い病院」ではなく「信頼できる病院」
飼い主さんが本当に求めているのは、ただの“安さ”ではありません。
しっかり話を聞いてくれる
納得のいく説明をしてくれる
動物に優しく寄り添ってくれる
怖くない雰囲気がある
こうした「診療の体験」や「スタッフとの信頼関係」が整った病院に、飼い主さんは喜んで通います。
価格を理由に通う人は、価格で他院に流れる人でもあります。
信頼で通う人は、その価値を大切にしてくれる人です。
安さで集めると、従業員の幸せが削られる
価格を安く設定すると、売上は当然減ります。
するとどうなるか? ―― 人件費や採用品質、教育への投資が削られていきます。
終業後の残業が申請しにくい
有給や希望休が取りにくい
外科のチャンスが少なく、成長実感が得られない
頑張っても給与が変わらない
現場で必死に働くスタッフたちが、だんだん疲弊していくのを私は何度も見てきました。
そして最終的には、「いい人材から辞めていく」という悪循環が始まります。
まず幸せにすべきは、「お客さん」ではなく「一緒に働く仲間」
値下げして飼い主さんに喜んでもらうことが、悪いとは思いません。
でも、それによって一緒に働くスタッフが不満を感じていたら?
「また残業代、申請していいのかな…」
「院長ばかりが診ていて、自分はいつまで経っても診療任せてもらえない」
「安いのが売りの病院だから、今さら待遇改善なんて無理かも」
こうした小さな我慢が積み重なると、いずれスタッフは黙って去っていきます。
価格を上げられないのではなく、「上げる理由」を伝えられていないだけ
たとえば――
術前検査や麻酔管理をしっかりしているから安全性が高い
一件一件に時間をかけているから、説明や相談に応じられる
人件費をしっかりかけ、スタッフの教育にも投資している
こういった“見えない価値”をちゃんと伝えられれば、価格に納得してくれる飼い主さんは必ずいます。
「地方だから価格を下げる」より、「地方からでも価値で勝負する」
都心ではなくても、SNSや口コミを通じて価値は伝えられます。
地方だからこそ、信頼関係が深く、選ばれ続ける病院にもなれる。
そのために必要なのは、「価格を下げること」ではなく「価値を磨くこと」ではないでしょうか?
まとめ
「田舎だから高くできない」は思い込みにすぎない
安売りはスタッフの幸せや医療の質を削ってしまう
飼い主が本当に求めているのは“信頼できる体験”
自院の価値を言語化・発信できる医院がこれから生き残る
「価格」で選ばれるのではなく、「信頼」で選ばれる動物病院を。
その第一歩は、自分たちの提供する価値を見つめ直すことから始まります。